恋遊び 歌遊び

『万葉の詩情』吉野秀雄著、彌生書房刊。

あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る

題詞、
 天皇、蒲生野に遊猟(みかり)し給ひし時、額田王の作れる歌

この天皇とは天智天皇です。
「日本書紀」に、この時の狩りの記事があります。
狩りといってもこの時期(旧暦5月5日)は、薬狩と言い、宮廷の御料地へ行って、薬草とか鹿の角を拾うのです。
上記の本では、「野守は見ずや」を標野(しめの)=他のものが立ち入ることができないように仕切られた場所に立っている番人が見ているのではないかと解釈していますが、「野守」を天智天皇を指すのではという見方が昔からあったようです。
額田王は、今は天智天皇の愛人ですが、その前は弟の大海人(後の天武天皇)の愛人でもあったからです。
ですから、「野守」をそのように考えれば、「兄である天智天皇が見ていますよ」というハラハラドキドキ感が一層増すことは確かです。

 皇太子の答ふる御歌

紫の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに 恋ひめやも

二つの歌を比較して、この歌が端的、素直だと著者は述べているのですが、種明かしをすれば、この歌は狩りの後の宴席の場で披露された歌であり、宴席に参加している人たちのやんやの喝采を浴びるだろうことは推測できます。
しかも、兄弟の愛人として実際の額田王が詠んでいるのですから、刺激的な場面ではあります。

恋も歌も遊びとしての振舞いの中にあるということです。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント